食と映画と音楽と。

日々、感じたことを、ぽつぽつと。たまに、フカボリ。

大道芸のお兄さん

今日は用事で横浜へ向かい、

帰りに駅前でやっていた大道芸のパフォーマンスショーに足を止めた。

 

パフォーマーは、30手前くらいのお兄さん。

大勢の、ざっと数えて150人くらいの観客が見守るなか、

次々と成功していく技の数々。

少しだけ見るつもりが、すっかり夢中になって観てしまっていた。

 

「これが最後のパフォーマンスです!

みなさん、ぜひ最後まで見ていってくださいね!

終わって顔あげたら誰もいなかったら悲しいので・・・!」

あいまに挟むこのトークが絶妙におもしろく、(私の文才がないだけ)

彼はそうやって人の心を掴み、多くの人から好かれるキャラの持ち主のようだ。

 

(ああ・・・これを観終わった後には。)

大人はすぐこう思うだろう。大人はいつもずるいのだ。

しかし今日はほとんど席を立つ人がいなかった。それくらいみんな彼に釘付けだった。

 

舞台や映画はチケットを前払いで払うのに、

任意の後払いになるとスッと逃げるような大人げない大人には、ずるい大人には、

私はなりたくない。

 

 

「この大技で前に大怪我して、入院して・・・

次からはヘルメット被りましょうねってお医者さんに言われたので付けます」

想像するだけで痛々しい。

その怪我はトラウマにならなかったのだろうか。

ヘルメットとサポーターを付ける時間もしっかりパフォーマンスの一部だった。

 

入院のリスクまで背負って大技に挑戦するお兄さんは、とてもかっこよかった。

私には絶対できないことをしている、と思った。

大きなハシゴに乗ってバランスを取りながら、

先端に火がついた棒をジャグリングする大技は無事成功。

 

拍手喝采のなか、お礼をするお兄さん。

「みなさん今日はお集まりいただきありがとうございました!

お客さん集まらなかったらどうしようってすごく不安だったんですけど、

ほんとに嬉しかったですありがとうございます。」

「こうしてパフォーマンスできるのも、みなさんのおかげです。

また次に繋げるためにも、ぜひみなさんのサポートをお願いしたいです!

これからぼくが帽子をひっくり返して持つので、みなさんのお気持ちを、

できるならば、こう折り曲げられるものを!(笑)

強制ではありませんが、どうぞよろしくお願いします!!」

「伝わってないかもしれないので、、、

This is my job! Give me money!!(ここだけ英語w)

スポンサーもいないので、みなさんからいただくお金が全てです。

お札だと嬉しいです、2枚でも3枚でもいいですよ!

ATMに寄ってからでも大丈夫です!待ってますので!」

 

トークがとっても上手なお兄さん。

子どもから大人までどんどん人がお金を握って集まっていく。

私も元気と勇気をもらえたし、

何より子どもたちに夢を与えるという仕事を応援したいと素直に思ったから

英世さん1枚だけ、ほんの少しではあるが帽子に入れた。

 

 

このとき、お金はコミュニケーションツールだ、と初めて思った。

帽子の中身はお客さんの声援と応援の気持ちで溢れていた。

入れるときには皆、きっと「がんばれ!」「楽しませてくれてありがとう!」と

心の中で思うはずだ。そしてそれは彼にも伝わるはずだ。

 

あのとき財布から出した1000円は、普段買い物で使う1000円より何十倍も重く、

いろんな気持ちが詰まった紙切れだった。

 

 

名前も知らないお兄さんから教わったことが山ほどあった。

次にまたショーを観ることができたときには、この感謝の想いも込めて

もっともっとたくさん帽子に入れられるように

来年から仕事をがんばろう、と思った。